便秘改善

便秘は諸悪の根源です

便秘とは、そもそも捨てたい物、ゴミ(便)を溜め込んでいる状態ですから、体に良いわけはありません。ニキビや肌荒れの原因ともなりますし、お腹の重い感じも不快です。
また便秘は、体の不調和の結果ですから馬鹿には出来ません。腸の動きが悪いのか、腸管での水分分泌が悪くて硬くなっているのかなど原因は様々です。また腸の動きが悪い場合、単に「気」の流れが悪いだけなのか、それとも「血」の流れが悪いのか、両者ともダメなのかと原因には、実はいろいろあるのです。

腸を動かす

最も一般的な解消法は下剤を用いる方法です。よく使われる生薬に大黄だいおうがあります。これは直接的に腸を刺激して、動かし排便を促進します。その大黄が主成分の大黄甘草湯だいおうかんぞうとうは2000年前の「金匱要略きんきようりゃく」を出典としていることより、大昔から便秘は人類の悩みだったのでしょう。この大黄甘草湯は大黄と甘草の2種類の組み合わせより構成される単純な処方です。便を出すことに関しての効果はかなり期待できます。当院では、飲む人が量を調整しやすい様に錠剤にしています。
ただ、これではお腹が痛くなる場合や、または単独では出にくい場合があります。その場合は腸のエネルギー(気)の流れを改善してあげなければなりません。その様な時に私が良く使うのが、厚朴こうぼく青皮じょうひなどの生薬です。

気を動かす

不妊治療などで、血の流れを改善するのに通導散つうどうさん加味承気湯かみじょうきとう等をよく使うのですが、これらにはほんの僅かに大黄が入っています。また大黄と似たような作用のある芒硝ぼうしょうも入っています。入っているとは言え、ごく僅かで下剤濃度としては低いのですが、使うと頑固な便秘も改善されます。下剤の量が少なくてもお通じが出るのは、いわゆる気剤きざいと呼ばれる、エネルギーの回転を良くする生薬が配合されているからです。
下剤だけで出すのではなく、気の回りを改善してお通じを出すのは、便秘の改善だけでなく体質改善効果が期待できるのです。

「血」「水」を動かす

一方、当帰芍薬散とうきしゃくやくさん四物湯しもつとう人参湯にんじんとうなどの下剤成分を全く含まない処方でも便秘が改善したと言われることがあります。これらの処方は温性の処方で体の中を温めます。体が温まり血の巡りが良くなって便秘が改善してくる、と推測できます。
高齢者の方などに多いのは、水分の分泌不足や気・血の不足による便秘です。腸管の水分代謝が低下し潤っていないがために、便が硬くなってしまいます。潤腸湯じゅんちょうとうという処方は、当帰とうき地黄じおうなどの血を補う生薬に、麻子仁ましにん桃仁とうにん杏仁きょうにんなどの脂肪質に富んだ腸を潤す効果のある生薬が配合されています。さらに気の回りをよくする生薬、枳実きじつ厚朴こうぼくも配合されています。潤腸湯はこのようなバランスを軽度に調整しますので、高齢者の方に用いやすい処方です。
当院では、潤腸湯にさらに梹椰子びんろうし升麻しょうま木香もっこうなどの腸管の気の回りを促進する生薬を加えて、潤腸湯加味じゅんちょうとうかみとして使用しています。

「気・血・水」のバランスを整え便秘改善、体も快調に

若い女性の便秘の場合、血の巡りを改善することを主目的に、同時に腸管の気の巡りを改善することで便秘を改善させます。速効性が期待でき、月経不順・月経痛なども併せて改善されていきます。
また冷えが強い方は、体内を温める処方を使った方が良い場合があります。この場合少し時間はかかりますが、体の中を温めるわけですから、とても体は楽になって来るでしょう。
高齢者の方は水分代謝に気を使いつつ、年齢と共に減少している気・血・水を補うことで便秘を改善させます。
いずれも強い下剤を使うことなく、自然のお通じが得られるでしょう。
ただし、これらでも出ない場合は大黄などの腸管を動かす生薬を加えることで便秘は改善出来ます。
最後になりましたが、男性の場合に良く使うのが大柴胡湯だいさいことうです。大柴胡湯には、それ単独では出ない程度の極々僅かな大黄が入っていますが、生薬の組み合わせにより腸の気の流れが改善されて便秘が解消されます。私は大柴胡湯を単独では使わずに、厚朴、青皮などの、さらに強く腸の気の巡りを改善する生薬を加えます。そうすると、今までお腹がはって、はって・・・・と言う方が快便になりお腹も引っ込んで来ます。また、これでも改善せずに、腹診(おなかの診察)所見で抵抗や圧通(押さえて痛い)がある人には、さらに強力な大柴胡湯合大黄牡丹皮湯だいさいことうごうだいおうぼたんぴとうなどを使って便秘を改善させます。

便を出すだけなら大黄を使えば簡単です。ただし腹痛や習慣性の問題も気になるでしょう。体の中の、気や血の流れを整えて便秘を解消することは、体の本来の状態に戻り、これこそ自然なお通じが期待できます。

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この記事を書いた医師

院長【細野漢方診療所責任者】

細野 孝郎(ほその たかお)

漢方では、体を整えることで、病気を治したり、また病気になりにくい体作りをします。体のことでお悩みの方はもちろん、現在は健康だと思われている方も、ビタミンを摂るように、自分に合った漢方をみつけて、健康で楽しい人生を送りましょう。

昭和63年北里大学医学部卒 
日本東洋医学会認定医国際抗老化再生医療学会名誉認定医国際先進医療統合学会理事千代田区医師会所属

川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より聖光園細野診療所でも診療を開始。2021年12月法人(聖光園)から独立して細野漢方診療所として開設し診療を継続中。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、洗濯、料理、掃除、フルマラソン(サブフォー、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ベルリン、フランクフルト、香港、東京、大阪、京都、神戸)など。