当帰芍薬散は女性の基本処方とも言われて、幅広く用いられる処方です。優しい6種類の生薬より構成されるため、漢方を初めて試す方も心配なく服用できるでしょう。
当帰芍薬散は金匱要略と言う3世紀に書かれた医学書に記載されているます。当院ブログでも当帰芍薬散に関して記事を多数書いて来ました。詳しいことは各ブログの記事へのリンクよりご覧ください。
疾患別コーナーでは現在(2023.4.1)までにアップした記事を抜粋し、要約して纏めてみます。
当帰芍薬散の根本となっているのは四物湯と五苓散
当帰芍薬散=四物湯+五苓散
当帰芍薬散の6種類の生薬の構成を考えると、当帰芍薬散≒四物湯+五苓散となります。ニアリーイコールとしたのは、両者を合わせた物から桂枝、猪苓、地黄を抜くからです。
四物湯とは
四物湯は4種類の生薬から構成される女性系の基本処方です。四物湯は血虚に用いる処方で、血の気の少なそうな人、血の質が悪そうな人に使います。もう少し分かりやすく言えば、貧血気味の人、産後の人、不正出血がある人、子宮内膜が薄く妊娠しにくい人、皮膚が乾燥している人(乾燥タイプのアトピー性皮膚炎なども含む)などが対象となります。
四物湯の構成生薬は、当帰、芍薬、川芎、地黄の4つです。このうち当帰芍薬散には、地黄以外の当帰、芍薬、川芎の3つの生薬が含まれます。これらの女性系の生薬は比較的細い血管レベルでの血流を改善する副作用の少ない優しい生薬とここでは考えて下さい。
五苓散とは
五苓散は5種類の生薬から構成される水分代謝の基本処方です。五苓散は水毒(水毒)に用いる処方で、浮腫みやすい人、口が乾いて尿量が少ない人などに使います。
五苓散の構成生薬は、猪苓、茯苓、沢寫、桂枝、白朮の5つです。桂枝以外の4つの生薬に水分代謝を調整する作用があります。桂枝(桂皮)には気の流れ(エネルギーの流れ)を下方に持ってくることにより、水分代謝を更に促進させる作用があります。このうち当帰芍薬散には、白朮、茯苓、沢寫の3つの生薬が含まれます。
当帰芍薬散の合う人は
以上のことより、当帰芍薬散は女性系疾患ある人(瘀血)で浮腫みなどの水毒症状ある方が適応です。
例えば、月経不順や月経痛、更には子宮筋腫から不妊症などの女性系の問題があり、更には浮腫みやすい方などが適応になります。多くの方がこれらの悩みを抱えておられると思いますが、当帰芍薬散は比較的優しい処方になるので、まず最初に試してみる価値はあるでしょう。
妊婦さんの基本処方とも言われています
金匱要略の中では、当帰芍薬散は、「妊娠中の女性が、お腹の絞るような痛みを訴える時」また「女性(妊娠中に限らず)がお腹の急な痛みを訴える時」に用いると書かれています。
また当帰芍薬散は安胎薬とも言われて、妊婦さんの血液の質を良くして、水分代謝を保ち、子宮を穏やかに保つことで、母体と赤ちゃんを守ってくれます。今では更に妊娠高血圧症候群にも効果があると数多くの研究結果が発表されています。当院では以前から基本的には妊娠高血圧症候群の予防として、妊娠が判明した時から服用することをお勧めしております。
まとめ
- ・当帰芍薬散≒四物湯+五苓散
- ・四物湯は女性系の基本処方
- ・五苓散は水毒に対する基本処方
- ・女性系の疾患があり、かつ浮腫みやすい方に
- ・妊婦さんの基本処方でもある
- ・優しい処方なので、服用しやすい
以上のことより、当帰芍薬散は幅広い年代の女性の諸症状に、また妊娠中の体調管理も含めて服用できる処方です。