細野漢方診療所 Hosono Kampo Clinic
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更年期障害や月経困難症の漢方治療

更年期障害

女性の漢方3」でご紹介した治療は不妊症だけでなく、更年期障害や月経困難症などともほぼ共通です。ただ前述のように不妊症の治療は時間があまりかけられませんので、少し強めの処方で反応をみながら考えることが多いのですが、月経痛や月経不順の方の場合は最初から基本的な使い方で治療をしていく場合が大半です。治療の方針や期間の目安は前記「女性の漢方3」していますのでご参照下さい。

更年期障害は加齢により女性生殖器系の「血」の巡りが悪くなり、それに伴い「気」の巡りが悪くなったものと考えられます。さらに悪くなった「気」の巡りが「血」の巡りをさらに悪くする悪循環が生まれます。基本的には両者の巡りを改善する必要があります。

もっと具体的に言えば、加齢により子宮卵巣系の血流が低下しそれに伴い卵巣ホルモンなどのバランスが崩れて、いわゆる自律神経失調症の様な症状が出る、これがいわゆる更年期障害の症状となります。つまり不正出血や月経不順などの「血」の巡りが悪いために出てくる症状も気になりますが、血の巡りの悪さがもたらす「気」に関する症状、のぼせ、ほてり、めまい、ふらふら、動悸、イライラなどいわゆる自律神経失調症の様な症状も問題になります。治療では不正出血や月経不順などの症状が前面に出ていても「血」の巡りのみを良くしても改善しませんし、同様に自律神経の症状が前面に出ていても「気」の流れのみ改善しても良くなりません。気血両者の流れを改善する必要がありますが、そのためには現在の状況を正しく判断して、どの様な割合や強さで流れを整えたり、または足りない部分を補ったりを考えなければなりません。

血や気の流れの両者を整える、代表的な処方には通導散(便秘がある人に使いやすい)、通経湯、加味逍揺散、更には桂枝茯苓丸から女神散など、まだまだ書ききれない程多数あります。もちろんこれらの基本処方をベースとし、その方の状態に応じて薬の強さやバランスを調整して調合して行きます。更年期障害の逆上せ、イライラ、動悸などの諸症状は月経前に悪化し、月経周期2〜3日目頃より改善するパターンを繰り返すことが大半です。よって治療の効果はどんなに最低でも月経を1回越えて行かないと分かりません。また一ヶ月ごとに症状の変化を繰り返す場合もあります。これらのことからも3回は月経を越えていかないと本当の効果は分かりません。ただ何となく良い感じは比較的早く(次回の月経くらいから)に出ると思いますので、そうなれば治療も続けやすいでしょう。

少し加味逍遙散について加筆しておきます。加味逍遙散は比較的優しい処方で使いやすいため頻用されると思います。加味逍遙散はベースを逍遙散として、そこに山梔子と牡丹皮を加味した処方です。逍遙散は主として自律神経系を整える処方で、牡丹皮は女性系を含めて血流を改善する生薬になります。以上より更年期障害などで自律神経系の症状が気になる場合に使いやすいのです。細かいことを言えば、山梔子と牡丹皮には体を冷やす作用があるので冷えやすい人には注意が必要です。

また気と血の流れを改善するのが基本と書きましたが、主に血に関する処方、例えば不正出血をまず止めたい時などには芎帰膠艾湯を処方することがあります。これは女性の基本処方である四物湯を基本に止血効果のある艾葉を加えた処方です。芎帰膠艾湯は更年期障害のみならず、妊娠中も含めて不正出血に幅広く用いる処方です。また一方めまいやクラクラのみが症状である場合は、主に気(と水)に関する処方、苓桂朮甘湯などをよく用います。もちろん苓桂朮甘湯は更年期障害だけではなく、メニエール症候群などを含めて、めまい、耳鳴りなど首から上の症状がある時に用いる処方です。

更年期障害の治療を開始するのはもちろん早いに越したことはありません。しかし症状が何もないのに治療を開始することもありません。症状が出てからでも充分に改善しますので慌てる必要はありません。不妊の治療を行っていて、不運にも妊娠しなかったため治療を中断してしばらくすると更年期症状に悩まされて、再び来院される方もおられます。

「不妊治療をしていた時はのぼせや生理痛が楽だったのに、治療を止めてから半年で生理痛が復活して更年期症状がでてきた」「不妊治療をしていた時には体が楽だったのに、漢方止めたらいろいろ調子悪くて・・・・」と言う方も中にはおられます。その時点より漢方治療を再開すると、また症状は軽快します。ただ今回は不妊ではなく更年期の治療になること、前回の時よりも加齢は進行しているので同じ処方で良いかは考えねばなりません。これでまた更年期障害の症状が楽になり、再び漢方を再開して頂ける方もおられます。不妊治療の結果を出せなかったのに再び来て頂けたのは、妊娠には至らなかったけれどもそれなりの「体調の良さ」を体感して頂いたからだと思っています。

この様に漢方治療は女性の一生を通して体質改善に大きく貢献することが可能です。特に不妊症や月経に随伴する諸症状から、子宮筋腫、卵巣嚢腫、さらには冷え性、更年期障害などの女性特有の疾患を改善するのに役立ちます。そしてそれらの治療効果は、早い段階で体感することができます。特に月経のある女性は月経の感覚を通じて漢方の効果を体感できるでしょう。これらのことでお悩みの方は、そのあたりを治療効果判定の基準として是非とも漢方をお試し下さい。いつでもお待ちしております。

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この記事を書いた医師
東京診療所 細野 孝郎

院長【細野漢方診療所責任者】

細野 孝郎(ほその たかお)

03-5251-3637

漢方では、体を整えることで、病気を治したり、また病気になりにくい体作りをします。体のことでお悩みの方はもちろん、現在は健康だと思われている方も、ビタミンを摂るように、自分に合った漢方をみつけて、健康で楽しい人生を送りましょう。

昭和63年北里大学医学部卒
日本東洋医学会認定医国際抗老化再生医療学会名誉認定医国際先進医療統合学会理事千代田区医師会所属

川崎市立井田病院、藤枝市立志太病院、北里大学病院などを経て現在に至る。
北里大学病院では、膠原病・リウマチ・アレルギー外来を経て、漢方外来設立に尽力、担当。
1992年より聖光園細野診療所でも診療を開始。2021年12月法人(聖光園)から独立して細野漢方診療所として開設し診療を継続中。
得意分野:内科系疾患全般、月経困難症や不妊などの婦人科疾患、皮膚疾患。また、体質改善や健康維持など、加齢にともなうエイジングケアの漢方にも力を入れている。
趣味:猫、洗濯、料理、掃除、フルマラソン(サブフォー、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク、ベルリン、フランクフルト、香港、東京、大阪、京都、神戸)など。

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