妊娠はするけれども、流産等を繰り返し結果として妊娠を継続できない状態を不育症と言います。原因は明確な場合もありますが、半分以上の例で原因ははっきりと分かりません。原因が特定できている時には、その原因疾患の治療をすれば妊娠を継続することが可能です。繰り返し流産される方はまずは検査を受けてみて下さい。
原因不明の流産を繰り返す場合は漢方治療の適応です。治療内容は、その方の状態、体質に合わせて決定します。基本的には気、血、水の流れを整え、東洋医学で言う五臓(肝・心・脾・肺・腎)の機能を正常に保ち、全身のバランスを妊娠継続できる様に整えることが治療の目標となります。つまり子宮内環境の改善を目指す治療が不育症の漢方治療です。
また妊娠中にも継続して服用する必要があるために、あまり作用の強い処方は用いず比較的作用が優しく、それでいて子宮の無駄な収縮を抑え(子宮が動いてしまえば受精卵は着床しづらいし、またその様な環境下では胎児も安心できません)さらに子宮の血流を程よく保つ(血流の悪い場所では育ちが悪いですから)生薬を組み合わせて考えて行きます。
一般的に用いられる処方として、当帰芍薬散、芍薬甘草湯、桂枝茯苓丸などがあります。但し、妊娠中に服用するものですから、必ず専門の経験ある医師に相談して下さい。私も基本的には上記処方を単独で用いたり、組み合わせたり、または上記処方をベースに生薬を加えてその方の状態に合った漢方処方を組み立てて行きます。
不育症や原因不明の流産を繰り返す場合、治療開始の時期は早ければ早い方が良いでしょう。妊娠が判明する前からの治療をお勧め致します。