当帰芍薬散のあれこれについて、ブログに中で過去に2回程書いて来ましたが、今回はもう一歩踏み込んで実際にはどの様に処方しているかについて書いてみます。
当帰芍薬散は女性の基本処方ですから、妊婦さんの流産予防としても重宝されて来ました。簡単に作用を説明すると、血液の質を良くすることで赤ちゃんに質の良い血液を供給することが出来ます。赤ちゃんの栄養は母体の血液によりますから、血液の質を上げることは赤ちゃんの成長に大切です。また妊娠後期に差し掛かると浮腫みが出やすくなります。過剰な浮腫みは心臓に負担をかけたり母体に悪影響を及ぼす可能性があります。また悪阻を若干軽くする作用があります。たまに小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)が悪阻に効果あるなどと書かれていますが、私ももう何百例使ったか記憶にはありませんが、それよりも当帰芍薬散の方が悪阻にはマシだと思います。多くの妊婦さん達に言われて来たので間違いではないでしょう。おそらくは白朮、茯苓と言う生薬が消化管内の水分を排出させる働きがあるからだと推測されます。ここで期待されても困るのですが、マシと言うレベルで、悪阻に関しては赤ちゃんが元気な証拠と思って我慢するしかないでしょう。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんとう)や五苓散(ごれいさん)は、お天気頭痛や眩暈などの時に良く用いられる処方です。五苓散は当帰芍薬散の一部だとは何度か書いて来ました。苓桂朮甘湯とは、茯苓、桂枝、白朮、甘草の4種類の生薬から構成される処方です。当帰芍薬散とは、茯苓、白朮が重なります。足らない2生薬(桂枝、甘草)を足せば苓桂朮甘湯の姿が見えて来ます。そこで当帰芍薬散に桂枝、甘草を入れて、当帰芍薬散合桂枝甘草を作れば、当帰芍薬散(女性系処方)を基本にした、お天気頭痛や眩暈などの処方が完成します。
当帰芍薬散=当帰+芍薬+川芎+白朮+茯苓+沢瀉
苓桂朮甘湯=茯苓+桂枝+白朮+甘草
両者で白朮と茯苓が重なるので、桂枝と甘草のみを当帰芍薬散に加えます。
当帰芍薬散加桂枝甘草=苓桂朮甘湯+当帰+芍薬+川芎+沢瀉≒苓桂朮甘湯+四物湯
当帰芍薬散などを服用中の方が、頭痛や眩暈がする、または頭がスッキリしないなどの訴えをされることは良くあることです。当帰芍薬散に苓桂朮甘湯を加えてしまうのは、重複する生薬が多すぎて好ましくありません。そう言う場合には当帰芍薬散に桂枝を気持ち多めに入れて処方します。当帰芍薬散を服用している方の大半は、当帰芍薬散を休みたくないので当帰芍薬散に手を加えて良い処方ができないか?とおっしゃいます。そこで頭に溜まった気を動かす(下に降ろす)作用のある桂枝を加えて、苓桂朮甘湯を当帰芍薬散の中に作って行くのです。それでも症状が軽快しない場合は、苓桂朮甘湯を主処方に変更し、そこに四物湯を少量加えていけば帰芍薬散加桂枝甘草に似た処方になります。
ちょっとややっこしい話になってしまいましたが、四物湯、五苓散、苓桂朮甘湯、当帰芍薬散の構成生薬を書き出せば、パズルの様に色々な組み合わせが見えてくるかと思います。
(過去ブログはこちら、あの当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)も五苓散の生薬が基本です、当帰芍薬散の根本となっている四物湯(女性系の大基本処方)について見てみよう )
組み合わせと言えば、ベイカー・ストリート駅でふと顔を上げると駅の壁に描かれたパイプを加えたシャーロック・ホームズの顔と電車の窓に貼られたNO SMOKINGが洒落の様に重なっていました。このご時世におられたら愛煙家のホームズさんもさぞ肩身が狭かったでしょう。
あと今更ですが、メダルの写真がないだろ!?と患者さまから指摘を受けまして、全く気付いていませんでした。アップしておきます、これでよろしいでしょうか(笑)!?
細野漢方診療所 細野孝郎