• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

当帰芍薬散=四物湯+五苓散(マイナス3種類の生薬)


女性系疾患ある人(瘀血)で浮腫みなどの水毒症状ある方が適応です。異なる作用の2つの処方を合わせた物が当帰芍薬散です。キャッチ画像の冷しゃぶと温しゃぶのタレ以上に異なる2者です。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、女性の基本処方であり漢方にあまり詳しくない医師も気軽に出してしまう処方かと思います。ツムラなどの保険漢方の23番です。不妊治療や子宮筋腫、月経不順から更年期障害、更には妊娠中の方まで適応がある(証に合えば)ため、多くの方に処方されます。また当帰芍薬散は温和な生薬から構成されるので、体の弱い人(虚証)の人に用いる処方ですから比較的安全な処方(副作用の出にくい)と言えます。

当帰芍薬散の構成


当帰芍薬散は6種類の生薬より構成される処方です。先日のブログでも書いた水分代謝を調整する五苓散(ごれいさん)と女性の基本処方である四物湯(しもつとう)の合方から地黄(じおう)、猪苓(ちょれい)、桂枝(桂枝)を抜いたものと思って下さい。

以上より当帰芍薬散は何らかの女性系疾患(瘀血)があり、かつ浮腫などの水分代謝が悪いタイプに合う処方だとお分かりかと思います。このタイプ(体質)を間違えると漢方はあまり効果は体感できません。よく他院や薬局で「名前は覚えてないけど、なんか漢方を出されたんだけど、全くどこに効いているのか分からない!」とおっしゃる方がおられます。「それもしかして、当とか帰とか書いてあるやつ?トウキシャクヤクサンって名前で番号だと23番なんだけど?」と尋ねると、「あぁ!そうそれそれ、23番です!」これ笑い話みたいですが、本当によくあるのです。ある程度、体がしっかりしている人で瘀血の程度が強い人は当帰芍薬散ではビクともしないですし、また浮腫みや冷えなどの水毒症状がない人も同様で、あまり体感するところがないかと思います。もう少し駆瘀血作用の強い処方やあるい女性系の生薬の配合がもっと多い処方の方が効果を実感できるかと思います。

当帰芍薬散服用時の観察ポイント


タイプ(体質)が合うと当帰芍薬散はとても良く効く処方です。さすがに長年に渡り重宝されてきただけあります。当帰芍薬散を初めて服用する時に観察して頂きたいポイントはまずは2点、最初に尿量の変化です。体重にまで反映されると大成功です。次に生理痛、元々軽度あるいはなければ、経血の色や性状の変化です。服用した結果がどうなるか、とかのバイアスをかけずにフラットな感じで観察して頂いて素直な感想を教えていただけると今後の治療方針の参考になるでしょう。

今回、五苓散つながりで当帰芍薬散について書いてみたのですが、実は現在通院中の妊娠高血圧症候群の妊婦さんで当帰芍薬散を服用されていて経過良好な方がおられます。その方がお見えになった時に、当帰芍薬散を書いておこうと思いついた次第です。長くなってしまったので、妊娠と当帰芍薬散の話はまた次回以降にします。

参考までに

31/01/2023加筆:以下の記事もご参考下さい。

当帰芍薬散の根本となっている四物湯(女性系の大基本処方)について見てみよう

さらに当帰芍薬散について、妊婦さんからお天気頭痛や眩暈にも応用できます!

実際に当帰芍薬散を自分で買って試してみたい場合に具体的にどの様に服用すれば効果的だろうか?

ところで話変わって
さて先日スーパーで冷しゃぶのタレを買ったつもりが家に帰って見ると、温しやぶのタレと書いてあります。気温は30度は優に超えていますし、いくら冷房の効いた室内とは言いこの時期に温しゃぶは勘弁です。棚からカゴに入れた時は間違いなく「冷」だったはずですが。かなりガッカリしながら、きっと冷しゃぶタレの方が柑橘系が効いているんだろとか、誰かが間違えて冷しゃぶ棚に温しゃぶ戻したのかなとか思いながら、まぁ一応冷やしておくかとそのまま冷蔵庫に戻す時に(手首が返るので)、裏面が正面に来ます。そこには「冷しゃぶ」のタレと・・・・・なんと冷も温も同じ物??違いを期待していたのに同じ物と知ってがっかりしたような、このまま冷しゃぶでサッパリ食べれるので良かったような、内容(味)で判断せずにラベルに振り回されるのが情けないような、いろいろ複雑な気分でした。

当帰芍薬散は全く異なる2つの処方が合わさった物なので、どこかで当帰芍薬散を出されたら、しゃぶしゃぶタレのことでも思い出して、全く作用の違う2つの処方が合わさっているのだと思い出して下さい。

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