• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

気管支喘息のAさん、喘息発作はそこまで激しくなく、ただ軽い胸苦しさと咳、薄い水の様な痰が出るので小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を処方されました。一方、花粉症のBさん、水の様に流れる透明な鼻水とくしゃみあ理、こちらも小青竜湯を処方されました。そこでAさんとBさん偶然にお互い服用している漢方を見て、「Bさんて喘息だったの?」「Aさん花粉症あったの??」となりました。なさそうでありそうな話です。あれれ??小青竜湯は喘息の薬なの?それとも花粉症の薬??、間違えて処方されたのか!?みたいな感じになります。

小青竜湯でネット検索すると・・・・・やはりアレルギー性鼻炎が真っ先にヒットします。花粉症で病院や薬局に行くと、ほぼ100パーセント小青竜湯を処方されると思います。漢方を専門にしていたり、ちょっと詳しい先生は捻くれているので、他の処方を選択したり小青竜湯に手を加えたりしますが(笑)次に喘息の漢方を調べてみると、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)が真っ先に出てきます。喘息体質のAさんは、症状が落ち着いている時期は小青竜湯(実際には半夏厚朴湯や体質改善処方を合わせる)を服用しているのですが、春先や秋先の季節の変わり目は症状が悪化し、息苦しさや咳などが気になり出したら麻杏甘石湯に処方変更されます。さて花粉症でもないのにどう言うこと??前々回でも書いたのですが、事故に遭わないためにも、また自分の身を守るためにも構成生薬を調べて欲しいんです。ネットで簡単に分かります。今回はついでに葛根湯も合わせて3処方の構成生薬を眺めてみましょう。

麻杏甘石湯小青竜湯葛根湯
麻黄
杏仁
甘草
石膏
桂枝
芍薬
五味子
細辛
半夏
乾姜
生姜
葛根
大棗

これは何も分からずに見ても、単なる生薬の表にしか見えないと思いますが、キモになる生薬があります。それは全てに共通して含まれるの麻黄(まおう)です(ここでは甘草は気にしないで下さい)。麻黄が含まれる処方は麻黄剤と呼ばれているのは、麻黄が肝心だからです。

麻黄の主成分はエフェドリンと言う物質で、これには交感神経興奮作用があり、過剰に摂取してしまうと動悸、血圧上昇や不眠などの副作用が出てしまいます。副作用の出方は人によりさまざまで、当院基準の葛根湯(麻黄濃度10%程度、2g中に0.2g程度)でも動悸や不眠を訴える方が稀におられます。因みに小青竜湯の麻黄濃度は14%程度、麻杏甘石湯は25%程度となります。なので葛根湯で動悸する方が麻杏甘石湯を服用したら大事故になりかねません。よーく漢方が分かっていなさそうな所で処方されたのならば、まず麻黄が含まれるかどうかはググって調べてみて下さい。実際にあったのですが、花粉症で小青竜湯をずっと服用されている方が、最近薬を飲むと動悸がする様な胸が変な感じがするとおっしゃいました。「小青竜湯の副作用でそんなことあるけど、今更出ないと思うけどなぁ〜」と言ったところ、近くの病院で風邪をひいたからと葛根湯を処方されて小青竜湯と一緒に1日3袋飲んでいたそうです。さすがに麻黄剤を2種類、同時に1日量をフルはまずいよ・・・・となり、もう風邪の症状ないので小青竜湯のみに戻したら解決しました。もちろん(そんな使い方は基本しないと思いますが)半量、半量で合わせるとかならば、量的には問題ないでしょう。

最後に簡単に麻黄の作用について書いておきます。麻黄には気管支を緩めて呼吸を楽にする作用や発汗・解熱などの作用があります。またエフェドリンは市販の多くの風邪薬にも含まれているので、麻黄を含む漢方と合わせると過剰摂取になるので注意です!

Garminのスマートウォッチ(私の場合はランニングウォッチ)の測定機能に、睡眠スコアーと言うのがあります。心拍数や心拍の間隔で睡眠状態を測定するらしいです。深い睡眠、浅い睡眠、レム睡眠、覚醒と4つの睡眠状態が推測でき、その状態がスマホで確認できます。それを基に点数がつきます。もう少し細かく調べないと、この測定方法にある程度の信頼感があるのか、それともお遊び程度なのか分かりません。まぁ自分で調べても詳しいこと分からないので神経科の先生のお話を伺いたい所です。とは言え、毎朝点数が気になり低いと気分も下がり、逆に高得点だと身体も頭もスッキリ!です。プラセボ効果と言われても仕方ないですが、でも何となく点数と睡眠状態は一致している感じがあります。3月はずっと点数が良くなかったので、部屋の照明を落としたり、トイレの電球を暗い物に変えたり、また早めに寝る準備をすることで、4月に入って点数はかなり改善しました。中にはドーンを点数が下がった日がありますが、それはお酒を飲んだ日なので、やはりアルコールは少量でも睡眠の大敵です(笑)睡眠が悪いけど眠剤は嫌だと思っておられる方は、まずは数値化して傾向を把握し、そこで改めて対策を考える・・・・など、少し色々と試されても良いかも知れません。

細野漢方診療所 細野孝郎

診療日誌トップ