熱中症予防や夏バテ、いわゆる暑気あたりに使用する代表的処方に清暑益気湯(せいしょえっきとう)と言う処方があります。
清暑益気湯と呼ばれる処方には当院には主に3種類あります。内外清暑益気湯(ないがいせいしょえっきとう)、近製清暑益気湯(きんせいせいしょえっきとう)、そして当院創始者の細野史郎が内外清暑益気湯に手を加えた家方清暑益気湯の3種類です。
今回のブログでは内外清暑益気湯についてです。この処方は主に胃腸の働きを助けたり、飲み過ぎて溜まってしまった過剰な水分を調整してくれます。いわゆる夏バテ漢方の王道処方です。
内外清暑益気湯は・・・
内外清暑益気湯は1247年に書かれた「内外傷弁惑論」(ないがいべんしょうわくろん)と言う医学書に記載されています。詳しく見ていくとこれは15種類の生薬より構成されています。構成生薬を眺めると、人参や陳皮など暑さで弱った胃腸を補う物に白朮、蒼朮などの余分な水分を排出する作用のある生薬が加わっています。更には葛根や黄耆などの皮膚の発汗機能を調整する働きのある物、麦門冬や五味子、升麻などには、いわゆる滋養強壮や体の沈んだエネルギーを引っ張り上げる作用があります。
つまり暑くて体がくたびれて胃腸が動かなくなったり、水分を摂り過ぎて胃腸系に負担をかけてしまって食欲がなくなって怠いなどの症状のある方にはお勧めの漢方になります。
ここまで見ると、とても良い処方に思えるのですが含まれる生薬数が多いと言うことは、逆に言えば一つ一つの生薬のグラム数が少ないと言うことです。仮に全体量が10gならば配合比率を無視すれば一つの生薬が0.67g程度になります。逆に2つの生薬から成る処方(くどい様ですが配合比率は無視すればです)は一つの生薬が5gって感じです。これは良し悪しで、基本的に生薬数の多い処方には体質改善系の処方が多く長期の服用で緩やかに効果を表します。
以上まとめると、内外清暑益気湯は夏バテの症状が出る前から服用開始し、暑い期間を通じて継続的に服用することで胃腸の調子を整え夏バテを予防する処方だと考えられます。
次回に続く・・・・・
しっかり食べる人は夏バテにはなりにくいのですが、食べ過ぎたり飲み過ぎたりすると脾胃(ひい、漢方用語で胃腸系のこと)を傷めてしまい、結局は食欲低下し夏バテになってしまいます。お互いに気を付けましょう。
聖光園細野診療所の中田理事長の書かれた「熱中症対策と漢方治療」もご参照下さい。
追記:自分も当院webに過去記事で「夏バテ対策の漢方」を書いていたみたいです。
細野漢方診療所 細野孝郎