少しタイトルを変えてみましたが、以前からの続きになります。
八味地黄丸(以下、八味丸)は加齢に伴う諸症状に理屈的には何となく効果ありそうな感じがして来ました。加齢(と言うか、この場合は老化)と共に、尿の問題や目の霞み、足腰の冷えや弱さ、喉の掠れから皮膚の乾燥、そして疲れやすいなどなど、腎虚症状が少しずつある人に合う処方だと書いて来ました。実際に何か突出した症状がある場合と言うよりも、何となくこれらがある場合にピッタリな処方です。
そう言う何となくな感じの処方なので、年を取った方への効果の出方も何となくです。(またいずれか説明しますが、若い人へ目的を持って処方した場合は、効果の発現は意外と早いです。)この何となくは、月や年単位で実感してくると思って下さい。なので八味丸での治療経験が浅い人が処方しても、「飲んでも効いている気がしない」と言われれば、「もう少し続けて下さい」と自信を持って言えないでしょう。私も40年近くやっていますが、八味丸って良いなぁ〜と実感できたのは何年か前のことです。先代の頃から通っていただいていたご高齢の女性の方で、漢方で体調維持にご理解が深かった方ですが、この方に加齢と共に腎虚の症状があったので、何年も八味丸を基本とした処方をしていました。2〜3ヶ月に一回、定期的に受診され、「いかがですか?」と尋ねると「特に変わりません」の繰り返しでした。もちろん風邪を引かれたり、夏の暑い時期には処方を変更したりしましたが、基本的には八味丸を継続していました。90歳も超えて夏も暑いと来院も困難になり、電話を頂いて薬を送ったりもしていました。その方が亡くなってから暫くして、家族の方が御来院されて「母はいつも先生に処方された薬を飲んでいて、特に大病もせず最後は本当に眠るように大往生しました。今思うとあの漢方が良かったんだと感謝しています」とおっしゃいました。その時に実感したのが、八味丸は長い期間で考えるべき処方で、高齢者への効果の発現も緩徐なため、処方側に治療経験がなければ効果に疑問を持って継続できなのではないかと言うことです。また説明も不十分になるため、患者様側も「何も変わらない、これ効いていない、他のにしてくれ!」と絶対になります。こう言う経験を積み重ねてくると、八味丸服用時には以下のようなことを先に説明します。
そうなると、「あははは!あの世に行ってからでないと効果が分からないならば気長にやります!」となります。ただ尿の感じ(頻尿)や腰回りの冷えに関しては1〜3ヶ月で何となく良い感じが出ると思うので、それらが最初の観察ポイントとなるでしょう。
さて、今年も残すところあと一週間です!今年は28日(土)まで診療しています。翌日の29日は天気良ければ久々に30キロ程度を目安に走ってみようかなぁと考えています。しかしこれが年末年始の唯一の予定です。「年末年始の予定を考えたり出かけたりするのがとても面倒である」これも腎虚の症状です(笑)
細野漢方診療所 細野孝郎