前回は高齢者の方向けの話に至らずに終わってしまいました。当然のことながら年齢を重ねると、疲れやすい、目が見えにくい、歯茎がブヨブヨする、耳鳴りや聞こえが悪い、尿の出が良くない、頻尿だ、腰が痛い、冷えるなどの症状が加速度的に出現して来ます。いずれかの症状が突出していれば、まずはその症状に対する治療となります。しかしこれらの症状が少しずつ気になって病院に行き、総合病院の全科を制覇し山盛りの薬を貰っても「なんか変わらないなぁ〜」と感じるならば、それこそ体質改善の考え時でしょう。もちろん病院に行って薬もらう程ではないけどなぁ〜の初動段階でも大丈夫です。
あくまでも私の個人的意見ですが、年を取ってしまったらそう簡単に体質は改善しないと思います。そもそも何もしなければ体質は低下する一方なので、一気に体力向上などと期待しないで下さい。ただ低下を食い止めて体質維持(緩徐な低下と言う意味です)を期待すると考えて下さい。
ここで高齢の方の特有の症状がなぜ起こるかを漢方では、エネルギー(気)の低下が原因と考えています。エネルギーの低下が疲労感を感じさせ、更に血流の悪さを引き起こし、歯茎が腫れたり、腰の冷えや痺れ、目の霞みなどに繋がります。そして水の流れまで悪くすることで、頻尿や尿の出の悪さなどに繋がると考えています。この気(エネルギー)は体の中の「腎」(腎臓ではありません)と呼ばれる部位に蓄えられています。老化とは加齢と共に腎の働きが低下するために気の蓄えが減った状態です。この状態を腎虚(じんきょ)と言います。治療は腎を補う補腎剤(ほじんざい)と呼ばれる処方の適応となります。次回は代表的な補腎剤(補陽剤)である八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を見てみましょう。
さてスイス旅行もメインのツェルマットを後にして、帰国のためにチューリヒに戻ります。帰りは豪華な観光電車ではなく通常の鉄道を利用するはずが・・・・・途中で工事のため不通区間があり、その区間はバスを利用したりして無事にチューリヒに戻って来れました。総じてスイスの人は親切で、駅でスーツケース持ってキョロキョロしていると誰かしら「どこ行きたいの、大丈夫?」と聞いてくれます。イタリアとかフランスで親しげに近づいてくる連中の大半は何かしら人の物を持って行こうとするのですが(笑)、ここスイスは心が休まりこちらの気持ちも穏やかになる良い国です。そして山や湖のある郊外のみならず、都会の街もゴミ落ちていなくて綺麗なのが良いですね。こういう穏やかな環境で生活することが気の流れも良く究極の体質改善かも知れませんね。
細野漢方診療所 細野孝郎