胃腸は食べた物を消化し、水分と共にそれらを吸収します。消化吸収された物は体のエネルギーの源であり、漢方では「気」と呼ばれています。病気の人でも、口から食べれなくなって栄養が点滴のみになってくると、不思議なことにあっと言う間に衰弱して行きます。胃腸をはじめとする消化管の働きは、われわれが元気で生きて行く上ではとても重要です。
この時期に胃腸が悪くなる典型的パターンは、過剰な水分摂取→吸収の上限を超える→胃腸に水分が溜まる悪循環パターンです。胃腸に水分が溜まってしまうと、胃液が薄まって食べた物が消化できなくなり、胃もたれの原因となります。更には水分過多で下痢となって、逆に脱水となってしまいます。またいつまでも胃に水が溜まっていると、吐き気や嘔吐に繋がり、これまた脱水となってしまいます。
ご存じの様に、私は趣味でマラソンを走っていますが、最近一番困っているのは年齢による筋力の低下ではなく、胃腸からの水分吸収の低下です。10年前ならば5キロ毎のの給水所全てでスポーツドリンクや水を摂取しても問題はなかったのですが、ここ最近は胃に溜まってしまって少ししんどい思いをしました。胃に水分が溜まって走っていると、重い胃袋が揺さぶられて酷いと吐き気や嘔吐に繋がります。
ここの所テレビでは「水分を十分に摂って下さい!」と盛んに言っていますが、それを見て「そんなガバガバ飲んでも吸収するわけないやろ」と思って見ていたら、先日は「水中毒に注意!」(大量の水分摂取により血中のナトリウム濃度が低下した状態)などと同じ番組で言い出して、「どうしろ言うねん!」と思わず突っ込んでしまいました。患者様にもよく「どれだけ水分を取った方が良いですか?」と質問を受けますが、決まって「欲しいだけ飲めばいいから、透明な尿になるくらい飲んでおけばいいから」と答えます。
もちろん適度な水分を摂るにしても、発汗量や食事からの水分など色々と要因はあるので、飲水量が多かったり少なかったりするでしょう。ただこの時期は不足するよりも、少々過剰に入ってでも、それを吸収して流し出した方が体には良いはずです。腎臓なども水を流しておかないと機能が落ちてしまいます。
そこで普段は胃腸系に目立った問題のない人が胃腸の水捌けを良くする、この時期にお勧めの漢方薬を2つに絞ってご紹介しておきます。
細かく書き出すとキリがないので、潔く以上の2種類です。いずれも胃がくたびれた感じの時や、または下痢気味になった時も効果があります。胃腸機能の低下は「気」の低下に繋がり、元気のない人になってしまいます。水分過剰になりやすいこの時期だけでも試してみて下さい。
水は飲み過ぎもいけないのですが、遊ばれると困るんですよ。風呂に入れると大騒ぎするくせに困ったもんです。
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細野漢方診療所 細野孝郎