不妊症の漢方治療の基本は、女性の体質改善の漢方とほぼ同様で、何よりも血流改善や血の質の向上が求められます。血流を改善すると言うことは、つまり子宮・卵巣系の血流が良くなりホルモンバランスが整えられます。更に血液の質が向上することで、豊かな子宮内膜が形成されます。書くと容易く思えるのですが、血流や血液の質をバランス良く改善するには、処方する側にそれなりの経験値が必要にななります。そしてこの血流や血液の質の悪い状態を漢方では瘀血（おけつ）と呼んでいます。
２つのタイプの瘀血治療
血液の流れを良くするには、血流改善を主とする処方が必要ですが、これらの処方には強弱ありその方の体質に合わせて選択する必要があります。強い処方には、副反応として瀉下作用があるのでお腹の緩い方には注意が必要となりますが、便秘気味の方にはむしろ好ましい反応かと思います。強い処方では週に1回程度しか便の出ない頑固な便秘の方が快便になるくらい強く反応が出ます。便秘も瘀血症状の一つで、子宮・卵巣系の血流が悪いならば通常は腹部全体の血流や機能が悪く、腸の動きも悪いと推測できます。
逆に胃腸系が過敏な人には、優しく血流を改善する必要があります。この時に用いるのは、むしろ血液の質を主として改善する系の処方から選択する必要があります。少しややこしいのですが、血液の質を良くする系の処方にも、血流を改善する作用があります。但し優しく動きを改善するので、これらの処方はお腹を下すなどの副反応はほぼありません。またこれらの処方には体を暖める作用があるので、冷え性の方にも用いやすい処方となります。
暖めれば血管が拡張し血流が改善に
体を暖めることは、血流改善にはとても大切なことです。暖めることによって、血流が良くなるからです。冷え性の方の不妊治療の基本は暖めることが大切です。腹部の血流が悪い場合には、お腹の冷えとして自覚することはあまりありません。むしろ腰や太腿の冷えとして自覚します。なのでカイロはお腹ではなく腰に入れても良いですし、可能な方は自宅でお灸をしても効果的です。冷え性があり便秘の方などは、便秘があるからと言って強めの処方を選択しがちですが、この場合も暖める系の処方（優しい処方）から選択するべきです。暖めて腹部の血流が改善されれば、自然に腸も動いて便秘も改善されるからです。不思議なことに、この様な体質の方に強い系の漢方を使っても思うように効果が出ません。使うとしても治療の初期に半量程度で反応を見るべきでしょう。また標準的な漢方治療ではありませんが、場合によっては、敢えて最初に強い処方で一回血流を回して勢いをつけることもします。但しその投与量や投与期間には細心の注意を払う必要があります。
お腹を暖めると血流改善になると書いた手前、本日は30度近くもあるのにお昼は温かい「肉南蛮蕎麦」です、、、、、、が、暑すぎました。こういう時（暑い時）に無理をして熱い物を食べると、体に熱が篭ってしまい逆効果になることがあります。過剰な熱が体内に篭ると、部屋の中でも熱が天井付近に篭るのと同様に、体内でも上方に熱が篭ってしまいます。これがいわゆる「のぼせ」状態です。頭に熱が過剰に篭ると、顔が火照る、頭がボーッとする、頭が重い、クラクラする、耳鳴りがするなどの首から上の症状が出てきます。体内の熱が上に行かずにきちんと腹部に存在してこその、血流改善です！夏でもたまに冷房で冷えた時には温かい物を食べたくなりますが、こういう時にはむしろ食べると調子良くなります。夏の季節にはお腹を冷やさないためにと、温かい物を積極的に摂るよりも、むしろ常温で摂った方が良いでしょう。
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細野漢方診療所 細野孝郎
