胃苓湯の効果効能を教科書で調べてみると以下の通りでした。
「水瀉性の下痢、嘔吐があり、口渇、尿量減少、食あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛」と書かれています。どの漢方系の胃腸薬を見ても似たようなことが書かれていて、どれも同じかと思われるかも知れません。しかし処方の構成を見ると全く異なるので、それぞれが特徴を持った胃薬であることは明確なのですが、生薬レベルの内容まで考えて買う人はそうはいないと思います。処方する側でも胃苓湯の構成を分かってない人もいるでしょう。根拠ない処方でも治るかも知れませんが、確率は根拠ある物より低いはずです。更に外した時には事態がより複雑化していることは多々あります。何より時間の無駄になるので、良くなる確率の高い物を優先的に選択したいものです。そのためには、処方される側もある程度の知識を入れておけば、外した物を処方されてしまったり買ってしまったりする確率も減るのでははないでしょうか。胃苓湯のポイントはズバリ胃腸系への過剰水分の貯留、つまりお腹ダボダボになります。ガボガボやタポタポ、これらも良い表現です。これらの症状をメインと考えたのは、つまり胃苓湯が平胃散と五苓散を合わせた物だからです。利水作用のある生薬や胃を動かして消化管内の水分を尿として排出させる生薬の詰め合わせ処方だと思って下さい。効果・効能にある水瀉性の下痢、嘔吐は消化管内に過剰に水分が貯留したために起こる症状です。胃腸が弱って吸収されない水は上か下から出さなければならないし、更に水は吸収されなければ尿として出ていくこともできません。この部分が尿量減少と書かれている理由です。口渇は少し難しく、胃腸がダボダボならば口の中もジュルジュルかと思うのは当然です。これは体全体の水分代謝が巡っていないため水が体の上部まで巡る力が不足する、そのため口の中の水分が枯渇している状態だと思って下さい。お腹ダボダボがまず存在して、更に口渇があれば十分に胃苓湯を選択する根拠となるでしょう。
ちょっと昔の写真を引っ張り出して来ましたが胃苓湯のイメージとしてはこれです!水分でお腹タポタポ、ガボガボとなって下痢、更には嘔吐などです。
細野漢方診療所 細野孝郎