前々回の続きになります。柴胡剤と一括りに言っても種類が多くどれを選ぶか迷うところです。その時点での症状は、①軽い寒気があったり夕方頃になると微熱が出たりする(往来寒熱)、②脇腹に重苦しい違和感があり胸がいっぱいになった感じがする(胸脇苦満)、③食欲が今ひとつ、④胸苦しくて吐き気を感じる(心煩喜嘔)、以上の4つの症状が主症状となり、更には⑤口がサッパリしない(口苦)、⑥咽が乾いた感じがする(咽乾)、⑦軽いめまい感や耳の聞こえにくい感じがする(目眩)、などが考えられます。もちろん全て揃う必要はありませんが、私は発熱後の経過で①、②、④あたりがあると基本的に柴胡剤を選んでいます。
さて、ここで体表のバリアを突破した敵の位置関係が重要になります。半数程度まだ体表部分で内部に侵入しようとしているけので発汗と共に押し返す必要があり、残りの半数は内部に侵入しているので解毒する必要があります。この状態を漢方では半表半裏(はんぴょうはんり)と言って、表と中に原因菌や風邪ウイルスが存在する状態を表しています。そうなると最初の段階で使った葛根湯のような処方も少し必要だし、さらには解毒系の処方(柴胡剤)も必要です。コロナウイルス感染症の時に一時期流行??した柴葛解肌湯(さいかつげきとう)などは、この状態に用いる典型的処方です。これは葛根湯プラス小柴胡湯と考えて下さい。表の敵も弱まって葛根湯までの強い薬は必要ないと考えるのならば、葛根湯のベースである桂枝湯と小柴胡湯を合わせた感じの柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)が良いでしょう。通常の季節性の風邪症状であるならば柴胡桂枝湯で十分かと思います。これはドラッグストアーでも入手可能です。より咽が痛い、また表の敵は桂枝湯では弱すぎると思えば、柴胡桂枝湯加桔梗葛根がピッタリでしょう。症状って出たり引っ込んだり、また伝える時には言い忘れたりするものです。なのであまり深くずに葛根湯の次は、柴胡桂枝湯加桔梗葛根の一択でも悪くはないでしょう。ドラッグストアーなどで入手できるのは柴胡桂枝湯加桔梗石膏ですが、これはこれで半表半裏の状態で咽の痛みが気になる時には良いと思います。
さて先週は不幸な目に遭って話が頓挫してしまいました。昨日抜糸してもらったのですが、まだ口が十分に開かずに上手に食べることが出来ません。それは置いておいて、マッターホルンの話に戻るのですが、麓の村のツェルマットからは登山鉄道を使えばマッターホルン近辺まで簡単に上がることが出来ます。さらに山頂駅からはマッターホルンに向けて下山ハイキングをすればかなり近くまで行くことが可能です。日本などはハイキングコースが決められていて、そこを外れると何だかんだ言われるのですが、スイスは自由(ある程度)です!ハイキングコースなどと言う決められたルートを行く必要なくみんな好き勝手にあちこちから下山しています。自分も最初は人の行かない所を下ったのですが、足元悪くて危なくて、結局は前の人について行くと言う典型的な日本人に(笑)しかしまた前の人が早くてとてもついていけずに結局は恐る恐ると。
目の前の湖を目指してゆっくりとです。トレッキングポールを持っている人は比較的楽に下山しています。こちらは何の予備知識もなく油断していたので、そんな物はレンタルすらしていませんでした!この国のハイキングがこんなに危険だとは知りませんでした。悪戦苦闘し湖に辿り着くと生まれて初めてみる絶景でした。重いカメラを持参したものの一番よく撮れたのがアイホンでの一枚、まぁそんなもんです(笑)
逆さマッターホルンが撮影出来ました!しかし本当に空気が綺麗だと言うのを実感できました。
細野漢方診療所 細野孝郎