基本的にコロナ感染の後遺症は当院ではあまり症例がありませんでした。そもそも通院中の方でコロナ感染する方はあまり多くなかったし、しかも後遺症が気になる方は少数でした。しかしここ3ヶ月位は通常の治療を休んで後遺症の治療をした方が良さそうな方がポツポツと出てきたので、記事に残しておきます。前回まで書いてきた女性系の治療については一回お休みです。続きを楽しみにされていた方には申し訳ございません。
20年来の女性の患者様で現在は50歳中頃の方です。元々は子宮筋腫の逃げ切り(手術せずに閉経まで逃げたい)目的で来院された方で、今はより良き更年期のために漢方治療・鍼灸治療を継続されている方です。体質的に瘀血体質なので、気を抜くと下腹部の血流が悪化し便秘にもなってしまいまうので駆瘀血薬少々に四物湯を合わせた処方を継続していました。その方が5月の末頃に咽の痛みと胸痛で近医を受診されてコロナ感染症と診断されました。6月中旬になっても、むせる様な咳と夕方になると体が疲れてしょうがないとのことでした。この症状に対して漢方を変更するのはどうか?と聞かれたのですが、駆瘀血薬を止めてしまうと便秘にもなるので、その点をリスクとして説明しお互いに出した結論が四物湯部分を削って咳の漢方を入れてみようでした。そこで麦門冬湯(ばくもんとうどう)を1/2量加えたのですが、1ヶ月続けてもこれが全くの不発で何か申し訳ないことに。7月中旬の時点で、粘稠な痰が咽の奥にくっついている、もちろん薄い痰も出てくる、相変わらず疲れやすい。そして一番気になる症状は胸の異様な圧迫感と咽喉がむせてしょうがないと言う点でした。胸苦しさは気管を広げる系、つまり麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)などを使うのですが、私はよほどゼコゼコしなければ使わないです。聴診しても肺雑音はないので仮に使っても1/3量程度です。でも麻黄は若干あった方が胸は楽になるはずです。そこで選んだのが小青龍湯です。麻黄剤だし、軽く温めてくれるしなどで体も疲れているので選びました。ただ全量は不要です、そこまで温めることもないし気管を広げることもないしで半量にしました。腹診で胸脇苦満(きょうきょうくまん)がないので、柴胡剤と組み合わせ必要もないでしょう。むしろ咽のむせる、つまり気管の浮腫を積極的に取った方が良くなるのではと考えて半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を2/3量組み入れることにしました。結果として小青竜湯合半夏厚朴湯です。今回は以上の考えで偶然この組み合わせになったのですが、これは祖父の時代からの細野家の家方みたいな処方です。半夏厚朴湯に関してはこのブログでも詳しく書いていますのでご参照下さい。さて、これを処方した時点でも効くのかどうかは自信はありませんでした。でこれで胸苦しが1週間で消えたそうで、そのうちに息切れや咽の違和感も消えて1ヶ月しないで体調は元に戻りました。こんなに効くとは思わなかったです。また同じ様な症状の方が最近多いので、症状によっては配合比を変えたり柴胡剤を併用したりする必要はありますが、基本的にこんな考えで今は治療しています。
ここまで暑い日が続くと昼は蕎麦しか喉を通りません。まぁ冬でも昼は考えるのが面倒なので蕎麦屋ばかりですが(笑)写真のこれは冷やしかき揚げ蕎麦です。かき揚げの内容は小柱、イカ、玉ねぎと三つ葉になります!暑くて食欲なくても?ざる蕎麦ではなく、少しでも合わせてタンパク質などを取るようにしています。
細野漢方診療所 細野孝郎