今回も不妊症の方ですが、少し変わったパターンです。と言うのも国外に在住の方で、一時帰国の際に当院にお見えになり、2週間後に戻るから一回で薬を合わせて欲しいとのご依頼でした。実は2週間はまだマシな方で、中には来週帰るから何とかしてくれなど・・・・・まぁ、みなさんそれぞれ事情があります。漢方治療って、そう簡単に一回で処方が決まるのではなく、こっちから突っついて少し動かしては軌道修正して、今度は少し異なる方向に動かしてみる、実際のイメージとしてはこんな感じです。なので短期で薬を合わせるのは、勘に頼る部分も大きいのですが、一番大切なのはあっちにもこっちにも動くのに時間のかかる物を選ぶのがポイントです。それ逆で短期で動く物を選ぶのでは?と思われるでしょうが、それは経験上失敗することが多いです。つまり大きく動かす処方、作用の強い処方は経過を短期で追わないと副作用が出たり、逆に体力を削ってしまうことがあるからです。なので優しい系統の処方、四物湯類がメインになってきます。
30代前半の女性の方で、最初に自然妊娠で流産、その後移植をしても着床せず、最近では採卵すら出来ずに「卵子の質が悪い」と言われて、一時帰国時に来院されました。すごく華奢な体格の方で、腹診上でも胃の部分が少し気になりましたが瘀血所見はありません。ただ月経周期9日目なので調子良く見えるだけかも知れません。つまり2週間後に診れば凄い瘀血所見があるかも知れません。薬はとりあえず5ヶ月分欲しいとのことでしたが、1回診ただけでは恐ろしくてそんな長期間出せないから、何とかもう一度診察させてくれと頼み込むと、忙しいが帰国前に都合付けて来るとのことでした。こう言う難しい時には、成功例が多かった処方の中で優しい系統の処方を選ぶのが一番です。さらに卵子の質を上げたいと言うのもあり、排卵湯ベースに体質改善の意味も込めて1/3量の四物湯を加えて処方しました。同時に鍼灸治療をしたのも良かったのか、一週後には「手が暖かくなった(年末です)、寝る時も寒すぎたが暖かく眠れるようになった」とおっしゃいました。この方はヨーロッパからの帰国だったので、日本の家はやはり寒く感じられたのでしょう。ただこの時も腹診で胃の部分がスッキリしない感じが気になったので、温める意味も込めて人参をごく少量加えておきました。半年後に電話が来て、ご家族が渡航時に持参してくれるので、状態は変わらないので同じ処方を8週分欲しいとのことでした。その後は連絡なく途絶えたかと思いきや、昨年の年末に4年ぶりにご来院です!そして何と嬉しい驚きの出産の御報告、そして第二子が欲しいので採卵から開始するので前と同じ処方が欲しいとのことでした。ご年齢も40代が近くなって来たので、同じ処方ではなく少し変えた方が良いのでは?と提案しましたが、5日後にヨーロッパに戻るとのこと(笑)まぁしょうがないです、ワンパターンですが排卵湯合四物湯に人参を少量加えて今回は12週間となりました。その後連絡はありませんがまた4年後に何かでお見えになる気がします。次回はもう少しゆっくりと日本に滞在して頂ければ助かります!
付け足しになりますが、排卵湯は移植前まで服用しても構わないのですが、良い受精卵が取れた瞬間に内膜厚くする系の処方100パーセントに変更します。この方の場合だと排卵湯ベースから四物湯ベースに切り替えます。薬は通関不可能で外国には送れません。お菓子の缶の底だとか、家具をくり抜いて送れば可能かも知れませんが、それでは違う薬に思われてしまいます(笑)なので採卵後も見込んで最初から排卵湯の量を削ってでも四物湯を加えていました。国内遠方の方の場合は、宅配便が届けてくれるので細かく合わせることは可能です!
先週はお休みを頂いて、所用も兼ねて南方に出かけていました。雨が続いていたこともあり東京より遥かに涼しい、涼しいと言うと大袈裟ですがかなりマシなレベルでした。まだここから暑いのが2ヶ月続くと思うと気が重いです。ただずっとエアコンの中にいて、運動も全くしていなかったので東京に戻ってから下半身から沈み込むように重い感じがします。これが皆様がおっしゃってる、暑いので足腰が重くて怠いと言う症状かなと思いました。基本的には五苓散に九味檳榔湯を合わせた感じで改善するかと思います。私の場合は二日間続けて、炎天下をスロージョグとウォーキングを1時間程度で何とか体の軽さが戻って来ました。ただ休みを先に取ってしまったと思うと微妙に気は重いです・・・・・
細野漢方診療所 細野孝郎