前々回から十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)について書いて来ましたが、今回は混同されてしまう補中益気湯(ほちゅうえっきとう)と比較して見ました。
十全大補湯と補中益気湯は説明書きだけ見ているとどっちでも良い感じがするでしょう。「病後の体力低下で食欲不振・・・・・・」と書かれています。そこでツムラの手帳(漢方の使い方が書いてあり、お医者さんが処方する時にコソコソ見ている茶色いアレです)を見てみると、十全大補湯の項目では病後の体力低下、補中益気湯では病後の体力増強と書かれています。これじゃどっちでも良いと思うのは当然でしょ(笑)しかし構成生薬を見ると全くの別物になります。
十全大補湯 | 補中益気湯 | |
当帰 | ○ | ○ |
芍薬 | ○ | |
川芎 | ○ | |
地黄 | ○ | |
茯苓 | ○ | |
白朮 | ○ | ○ |
人参 | ○ | ○ |
甘草 | ○ | ○ |
桂枝 | ○ | |
黄耆 | ○ | ○ |
柴胡 | ○ | |
陳皮 | ○ | |
升麻 | ○ | |
生姜 | ○ | |
大棗 | ○ |
こんなに違う処方を表にする人もいないと思いますが、違いが分かりやすいかと思います。十全大補湯のポイントは前回も書きましたが、四物湯ベース(あるいは四君子湯ベース)だと言うことです。一方、補中益気湯を特徴付けているのは柴胡(さいこ)と升麻(しょうま)です。ザックリと白朮、人参、陳皮、生姜、大棗など胃腸系の生薬に柴胡と升麻が入っていると考えて下さい。升麻は下に落ち込んだ気を引っ張り上げ作用があります。柴胡は引っ張りあげた気を回す作用があります。なので気が残っていない人が補中益気湯を服用してもあまり効果は感じられないでしょう。
手を枕にして寝られると、こちらが動けません。手を差し出したまま小一時間ほどテレビを見ているとビリビリと酷い神経痛が・・・・・・・サタデーナイト症候群(ハネムーン症候群)と言う手が痺れる病気?(症状??)があります。これは(男性が)腕枕をする(土曜の夜やハネムーンの時に)ことで橈骨神経が圧迫されることにより起こる神経麻痺、例えば朝起きたら腕が動かないなどで本当に存在する診断名です。大昔からある病名ですが、このご時世では問題になりそうな診断名です。さて、ネコ枕の場合は手を動かせないことにより肩首の筋肉が硬直して起こる頸肩腕症候群ではないかと思っています。当院では鍼灸師もおりますので、サタデーナイト症候群でもネコ枕症候群?でも対応致しております!
細野漢方診療所 細野孝郎