• 内科医師からスタートし、現在は三代続いている漢方専門のクリニックを銀座で開業中。女性系疾患(月経関連、更年期、 不妊症など)、アトピー性皮膚炎などから、ちょこっと体の弱い人までお見えになります。趣味はマラソン(基本的にはインドアでテレビ派)、猫(アメショ)、週に1回の外食。マラソンはsix stars finisher(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)日本人では338人目位の達成!!

本日、朝のテレビで内臓脂肪減少薬が来月よりOTCで発売されるとニュースになっていました。詳細は分かりませんが、食べた脂肪分の25%程度を便と共に排出してくれるみたいです。能書き通りに行けば良いのですが、さて実際にはどうでしょうか。今後の展開が楽しみです!

そこで今回は「痩せる漢方」と(なぜか)言われている、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)について考えてみましょう。

防風通聖散はテレビやネットなどで、「痩せる!」とか「ダイエットに効果ある!!」など言われて、今やそういう面が一人歩きしている有名な処方です。当院にかかっている方々さえも「ちょっと体重が増えたので飲んでもイイですか?」とか「痩せるって書いてあったので、ちょっと試してみたいから出して下さい!!」など、いきなり言い出すので、こちらにとっては困った処方になっています。そこで防風通聖散と言う前に、まずはここを読んでもらって、それでも試したければやって見ると言うことにしましょう!

防風通聖散はとても複雑な処方で、以下の18種類の生薬より構成されています。

防風(ボウフウ)、黄ごん(オウゴン)、大黄(ダイオウ)、芒硝(ボウショウ)、麻黄(マオウ)、石膏(セッコウ)、白朮(ビャクジュツ)、荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)、桔梗(キキョウ)、山梔子(サンシシ)、芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、薄荷(ハッカ)、滑石(カッセキ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)

ざっと目を通すと、四物湯から地黄を抜いた感じの、当帰芍薬川芎が確認出来ますが、これはもう説明不要でしょう。大黄芒硝甘草の組み合わせは調胃承気湯(ちょういじょうきとう)で、下剤になります。これで煩雑な18種類の組み合わせの1/3が見えました。

加減涼膈散(かげんりょうかくさん)と言う処方がありますが、これは口内炎や舌炎、舌の潰瘍から食道炎、胃炎などに使う処方です。構成生薬は8種類、大黄黄ごん桔梗石膏薄荷連翹、山梔子甘草となり、そのまま防風通聖散に含まれています。これで残り6つの生薬を考えれば良いだけです。

麻黄防風荊芥解表薬に分類される体の表面(皮膚)に取り付いた病邪を発散させる作用があります。汗をかかせたりすることで、病気を体外に押し出そうとする作用です。またそれだけではなく、皮膚の透発作用と言うのですが、皮疹などを出し尽くして治す作用があります。

滑石白朮には利尿作用があります。そして最後に生姜が残ってしまいましたが、おそらくは胃を保護する目的のためではないかと思います。

以上より防風通聖散は四物湯+調胃承気湯+加減涼膈散+解表薬麻黄防風荊芥)+利尿薬(滑石白朮)+胃腸保護(生姜)と考えらるので、どう言うタイプの方に適応するのかを次回考えてみます。

今年の東京マラソンはアメリカから来た友人家族(奥様がランナー)のサポートをしていました!(顔が出ない様に後ろ向きの写真ですが)

細野漢方診療所 細野孝郎

診療日誌トップ