抑肝散は7種類の生薬から構成されます。「柴苓朮甘、川に釣りして帰る」と覚えるそうです。つまり柴胡、茯苓、白朮、甘草、川芎、釣藤鈎、当帰の以上7種の生薬になります。この最初の4種類の生薬、柴苓朮甘の部分は身体の細い弱い人によく効く処方になります。加味逍遙散にもこの柴苓朮甘は含まれます。
さて当帰芍薬散も過去に何度も書いていますが、この構成生薬を見返して頂くと分かるのですが、当帰、川芎、白朮、茯苓と、当帰芍薬散の6種類のうち4種類の生薬が抑肝散に含まれています。また古典的には四逆散と柴胡、甘草が重なることもあり、四逆散の変法とみなされています。
以上より抑肝散は、四逆散を元に当帰芍薬散を加えて加減した処方で、(加味)逍遙散に似た様な感じの処方になるのです。
ややっこしいので、また表にしてみました。
抑肝散 | 当帰芍薬散 | 四逆散 | 逍遙散 | |
当帰 | ○ | ○ | ○ | |
川芎 | ○ | ○ | ||
茯苓 | ○ | ○ | ○ | |
白朮 | ○ | ○ | ○ | |
柴胡 | ○ | ○ | ○ | |
甘草 | ○ | ○ | ○ | |
釣藤鈎 | ○ | |||
芍薬 | ○ | ○ | ○ | |
枳実 | ○ | |||
その他 | 沢瀉、猪苓 | 生姜、薄荷 |
さて、この表を見ると抑肝散にしか含まれない生薬は釣藤鈎(ちょうとうこう)だと一目瞭然です。この釣藤鈎こそが抑肝散を特徴付けているのですが、釣藤鈎には鎮痙沈静作用や血圧効果作用があります。その作用によりイライラや筋肉の痙攣に効果があるのです。瞼の痙攣が長年止まらない方に抑肝散加芍薬黄連、更に釣藤鈎を増量した処方で改善しています。この方も四逆散や加味逍遙散、または釣藤散など各種を試しましたが、最後は抑肝散加芍薬黄連が一番しっくりと来て、それでも治り切らなかったので、釣藤鈎を増量すると瞼のピクピクがおさまりました。他に釣藤鈎が含まれている代表的処方としては釣藤散があります。過去ブログご参照下さい。
抑肝散はそのままではなく、芍薬黄連を加えて抑肝散加芍薬黄連としたり、また陳皮半夏を加えて抑肝散加陳皮半夏とした処方が主です。皆さんが薬局で買ったり病院で処方されるのは、そのいずれかでしょう。それらの生薬を加えると、抑肝散の中に当帰芍薬散と四逆散が隠れていた様に、新たな処方が隠れているのが見えてくるはずです。
次回はこれらの処方について考えてみましょう。
お休みさせて頂いていた間、親子揃ってシカゴに行って、その帰りにニューヨークで友達に会って来ました。シカゴには観光ではなくてマラソンです。2013年からシカゴマラソンも4回目、さすがにもうこれで最後かなと言う感じです。シカゴ中心部は街並みも綺麗で、人(店員さんなど)もニューヨークと比較するとのんびりした印象があります。いつも猫か食べ物しか写真がなくて、かなりマンネリ感が漂っていたので、これでしばらくは写真に困らないのが助かります(笑)
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細野漢方診療所 細野孝郎