最近、肩首の凝りが酷くてパソコンに長時間向かうのがなかなか辛い状況です。就寝前に肩首のストレッチと首のストレッチ枕での回復は欠かせません。そもそもここまで猛暑日が続いて、運動不足になっているのも一因かも知れません。通常の昼間も枕でリラックスしたいのですが、さすがにそれは無理です。そこで以前はゴルフボールを首と後頭部の境の部分(ツボの名前で言うと天柱あたり)に当ててゴリゴリしていましたが、ある程度は気持ち良いのですが、度を超えてやると逆に痛くなってしまいます。そう言う場合にはテニスボールや柔らかい筋膜リリースボールの方が自分には適しているはずです。ただこれはその人の筋肉や体格にもよるはずで、大きなレスラーみたいな人だと硬式野球の球が良いかも知れません。逆に細い痩せた女性などはテニスボールですら刺激が強いでしょう。話変わって、ゴルフをすると言う観点からは、ボールの標準はゴルフボールであり、テニスボールや野球の球などは論外で、仮にボーリングの球みたいに重くて硬いものを打ったらクラブは折れるし、手は痛めるしで大事になってしまいます。つまり、同じボールでもゴルフの観点から見ればゴルフボールこそ最適なボールである、しかしそのボールは肩凝りの治療には私から見れば硬すぎるのです。つまりゴルフボールはゴルフにも使えるし、マッサージにも使えるけれども、硬いので少々筋力のある人向けとなります。
先日、不妊でおかかりの方から「多嚢胞性卵巣なので柴苓湯(さいれいとう)は私にはどうでしょうか?」と聞かれました。凄く華奢な方で、いわゆる虚証タイプの方です。柴苓湯を使うのならば通常量は多い感じです。そもそも柴苓湯とは小柴胡湯と五苓散を足した処方です。小柴胡湯は虚証に合う薬ではなく、中間証、つまり実証〜虚証の間で用いることになっています。
柴苓湯は基本的には肝腎のデトックス機能を高めてくれる処方です。西洋医学的には肝炎、腎炎などの時などに良く用いられる処方です。もちろんそれだけではなく、いわゆる病気ではない時でも、肝(臓)や腎(臓)の働きを強めておきたい時などにも用います。柴胡剤(柴胡と言う生薬が含まれる処方、小柴胡湯や柴苓湯も柴胡剤です)を用いることは体質改善にも繋がります。この手の柴胡剤を用いる時には基本的に胸脇苦満と言う腹証が存在しなければなりません。診察の時にお腹を押して、皆さんが「あれ?そこ気持ち悪い」とおっしゃるアレです。肋骨(弓)の下を軽く押すだけで痛みや不快感を感じるのが胸脇苦満です。大昔から小柴胡湯は胸脇苦満がある人に処方されていた、つまり使用方法を守っていたから副作用が大問題になることはなかったのです。それが病名だけで腹診もせずに小柴胡湯や柴苓湯を適当に出してしまうので多くの副作用が出てしまうのです。当然これらの柴胡剤は慎重に処方していますが、それでも副作用を何例か経験しています。幸いなことに間質性肺炎はありませんでしたが、軽度の肝機能上昇です。いずれの方も服薬中止後の3カ月内で正常値に戻りました。
実は私も柴苓湯は常用しています。肝腎機能を常に高めて解毒体質になりたいのは皆さんと同じです。基本的には朝昼に柴苓湯を基本に数種の生薬を足した処方、夜は大柴胡湯(これは柴苓湯よりも強い柴胡剤)を基本とした処方を飲んでいます。昔の太っていた時は大柴胡湯を3回飲んで快適だったのですが、運動して痩せ出して体質も変わったのか、ある時より大柴胡湯がきつく感じる様になって来ました。飲むと下痢はするし体は怠いとかです。その時に柴苓湯に切り替えて、体調の変化を自覚しました。また今年の夏は異様に暑いせいもあるのか、柴苓湯2回、大柴胡湯1回ですが体の怠さを自覚していました。そこで更に弱い柴胡剤にするか悩みましたが、祖父の著書の中で柴胡剤は大柴胡湯→小柴胡湯と落として、それでも合わない時は体が弱っている時なので、暑清益気湯(柴胡剤ではありませんが)にしなさいと書いてあったのを思い出して、暑清益気湯に変更しました。過去に暑清益気湯は自分には全く効かなかったので、お試し半分で飲んでみたのですが、今回はこれが凄く効いて体がシャンとしました。今回の場合は暑清益気湯だけが選択肢ではなく、柴胡剤の中で選択すると補中益気湯や柴胡桂枝生姜湯などの虚証の柴胡剤なども選択に入るでしょう。
さて自分が大学病院にいた時から柴苓湯は本来とかけ離れた使い方をされていました。これはブームの様なもので、それが去って行くと忘れられてしまうのです。今のブームは「多嚢胞性卵巣や不育症に柴苓湯」ですが、当時は「自己免疫性疾患などでステロイドの減量に柴苓湯」でした。その当時の自分はまさしく自己免疫性疾患の治療に従事していて、ステロイドの減量は最大の関心ごとでした。柴胡が副腎皮質を刺激して、自前の体内ステロイドが増えるからステロイド剤が減量できると言う理論です。まだ臨床経験もそんなにない頃ですから、これで万事が解決する!と大喜びで数多くの方に処方しましたが、思うようにデータは改善されないし、そうなるとステロイドも減量できませんでした。うちの父親には「それで患者さんに効くなら良いけど、ちゃんと気い付けて使えよ」とだけ言われたのを記憶しています。おそらく「きちんと腹証を診て、合う人には使ってみれば良いだろ」と言いたかったのだと今にして思います。
さて、柴苓湯や小柴胡湯を本来の用い方から外れた用い方も多数経験したし、逆に腹証なども診て間違いないと思って処方しても副作用が出た例も経験して来ました。自分の経験で40年、当院では気を付けて使えよ、と言った人の更に先の代まで遡ると100年使って来て、やはり柴胡剤はきちんと考えて使わないとダメだと身に染みています。で、「多嚢胞性卵巣なので柴苓湯(さいれいとう)は私にはどうでしょうか?」と尋ねられると、これらのことが一瞬に頭を回って、「う〜ん、さいれいとう、ねぇ、まぁ、それねぇ」になってしまうのです。
もちろん柴胡剤を多嚢胞性卵巣の方に使って、生理がきちんと来続けている方は当院には多数通院されています。一番多い処方が小柴胡湯(半量)プラス桂枝茯苓丸(半量)の組み合わせです。多嚢胞性卵巣で胸脇苦満があればこの組み合わせをファーストチョイスです。詳しくは書きませんが、桂枝茯苓丸は駆瘀血薬と駆水薬の組み合わせになります。女性系の疾患(瘀血)には単に柴胡剤プラス駆水薬の組み合わせである柴苓湯よりも、それに更に駆瘀血剤が入った方が良さげではないでしょうか。小柴胡湯に女性系の代表的処方の四物湯を組み合わせて足したり引いたりすると、ほぼ加味逍遙散や補中益気湯になります。中の構成生薬を紙に書き出して眺めると分かると思います。加味逍遙散や補中益気湯は虚証の処方ですから、小柴胡湯から作用の強い生薬を減らしたり抜いたりする必要があります。つまりこれは虚証の人に安心して使える小柴胡湯(の変方)なのです。柴苓湯=小柴胡湯+五苓散なので、どうしても虚証の人に使いたければ単純に小柴胡湯を加味逍遙散や補中益気湯に置き換えて五苓散を加えれば良いと思います。あるいは短期間であれば、小柴胡湯を1/3量程度まで減らして五苓散と合わせても良いのかもしれませんが、これはやったことはないのであくまでも可能性としてです。
つまり柴苓湯は胸脇苦満がある場合の肝腎を整える処方ですが、多嚢胞性卵巣の方にも使って効果がある処方なのです。ただ虚証の方には思わぬ副作用が出るから注意が必要です。また不育症の時には、期間を区切って柴苓湯を使ってそれなりに効果があります。この使い方も西洋医学的な観点からの使い方になります。ただ安直に何がなんでも最初から柴苓湯と決めつけず、その方の体質や不育症のヒストリーや年齢などから総合的に判断してから選択すべきだと思います。気を付けてさえ使えば、柴苓湯は西洋医学的観点から多嚢胞性卵巣や不育症に効果ありますし、また漢方的な観点からは胸脇苦満や少陽病(そう言う病気の時期)の改善に効果があるのです。
話戻って、ゴルフボールは打っても良いし、首肩に当ててゴリゴリしてもいい、ただ硬いので筋肉や皮下脂肪の少ない人がゴリゴリし過ぎると逆効果です。なので、それは他に適した物がなければ柴苓湯同様に注意して使えば良いのです。
最近、色々な自動販売機を見かけます。牛タンやラーメンから餃子まで。スーパーなどで売ってる冷凍品を自販で売っているのだと考えれば、そう言う物だと納得できます。ラーメンとか餃子、炒飯などの冷凍品は各種見かけて人気があります。先日所用で立ち寄った所で発見したのがこれです。ビーフンが自動販売機で売るほどに人気があるとは知りませんでした!しかもこれ全て2食入りで600円と港区にあるくせにかなりなお手頃価格です!今思えば買ってみれば良かったのですが、「こんなのある!」と驚いて写真だけ撮って帰って来ました。
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