タイトルは変わっていますが前回、前々回からの続きとなります。
以前の話ですが、ある不妊系雑誌の取材を受けていた時に、「子宮内環境改善」とか「子宮温暖化計画」とかの言葉を聞いて、みんな色々と良く考えるなぁと感心したものです。良い子宮内環境とは、恐らくは子宮内フローラも整って、着床期には質の良い内膜が出来上がっている状態かと想像します。子宮温暖化とは、腹部を温めることにより子宮卵巣系の血流を改善し、より良い子宮内環境を作り、かつ卵巣機能の回復や向上に繋がっているのだと思います。
さて子宮内環境改善や子宮温暖化のためには、優しい系の漢方処方、当帰や芍薬など養血作用のある生薬が必要となります。これらの処方は血液を通す作用は弱いものの、血液の質を改善する作用や体を暖める作用はしっかりとあります。良い質の血液は質の良い子宮内膜を形成してくれます。血液の通りを良くして、更には質を高めなければならないのはこのためです。もちろんそれ(漢方治療)だけで絶対に安心とは考えず、場合によっては子宮内フローラの改善や、場合によってはホルモン補充、更には人工、体外受精まで視野に入れて治療は考えて下さい。不妊治療は時間との勝負と言う側面もあるので、やれることは全てやって後悔しないことが大切です。
少し話がそれましたが、子宮内環境改善のため漢方には漢方の役割があります。100%優しい系処方の代表は、当帰芍薬散や四物湯です。更には温経湯などは優しい系の生薬ベースに少し血流改善の処方が入っている良い処方です。通経湯や調経種玉湯なども優しい系ベースになりますが、そこに少し強めの生薬が若干量配合されています。この様に優しい系統の処方とは言っても、実際に良く使われる処方には若干血流を回すスパイスが加わっているので、とても敏感な方には注意が必要です。但しそこまで心配する必要はありません。
かなりの虚証、胃腸も敏感な方には当帰芍薬散に胃腸を暖める生薬を加えたり、または四物湯を半量程度などから治療を開始します。その他の大抵の方は、強い系統の処方を半量、四物湯を半量などの組み合わせで、血液を通す作用と質を良くする作用のイイとこ両取りを狙ったりもします。このあたりの組み合わせは本当に微妙な感じで、この組み合わせを決めるには、問診、舌診、脈診、腹診はもちろんのこと、その方の現在の不妊治療状況(体外とか人工受精とか、更には治療回数などまで)、年齢、生活環境(職場のクーラーで冷えるとか)などを総合して決めるます。この様に処方決の定因子が多岐に渡るので、○○だから××湯などと単純に書くことは出来ません。このあたりは実際に受診して頂いて、色々と方針を提案して決めて行ければ良いかなと思っています。
さて、先日の日曜日は東京ドームに野球観戦に行って来ました。ドームなんか十年以上ぶりでした。当日は気温も高く、野外の球場では1時間も座っていられない感じでしたが、ここはエアコンも効いて暑くも寒くもなくかなり快適でした。前回行ったボストンの球場なんか長年の歴史と解放感に溢れる球場だったために、最新鋭の巨大なオーロラビジョンが設置されたドームは斬新でした。まぁ両極端な両者ですが、それぞれ良いところあるので強い薬や優しい薬みたいに組み合わせると、良い感じになるのではないかと思います。ただそうなるとそうなったで、更に欲が出て気に入らない部分が出てくるのも処方と一緒かも知れません。今回は高い位置からなので全体が見渡せて良かったのですが、上からの見下ろしのため投手の投げる球の高低がよく分かりませんでした。次回はもう少し前の方の席が取れればイイなと思います。
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細野漢方診療所 細野孝郎