前回の続きです。
温清飲(うんせいいん)は黄蓮解毒湯(おうれんげどくとう)と四物湯(しもつとう)の合方になります。黄蓮解毒湯や四物湯はこのブログで過去に何度か書いていますので、よろしければタグよりご参照下さい。冷やす処方の黄蓮解毒湯、逆に温める処方の四物湯、真逆の両者を足してしまうのですから何とも不思議な処方です。とは言え、最近作られた適当な創作処方ではなく、1590年に書かれた万病回春と言う医学書に記載されているので、漢方処方としては比較的新しい処方に見えてしまうのですが、かれこれ500年も前に考えられた処方です。
今回は黄蓮解毒湯についてです。黄蓮解毒湯は黄蓮、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)の4つの生薬から構成されるシンプルな処方です。簡単に書くと、黄蓮解毒湯の作用は解毒作用と抗炎症作用です。アトピー性皮膚炎や蕁麻疹などは体の解毒機能を越えて毒素(こう言う表現が正しいのか分かりませんが)が溜まり、それが行き場がなくなり皮膚の弱い箇所より噴出すると漢方では考えています。そのため治療には解毒を助けてあげる必要があります。また黄蓮解毒湯には悪酔い予防の作用もありますが、これも過剰なアルコールの解毒を手助けする作用があるからでしょう。
更に黄蓮解毒湯には消炎作用があり、アトピー性皮膚炎などの炎症を抑えてくれます。つまり真っ赤に熱を持った状態のアトピー性皮膚炎などに用います。よく効くタイプの人は2週間程度で何らかの変化が自覚できると思います。
私の考えとしては、アトピー性皮膚炎の治療で一番先に治したい部位は顔です。顔の炎症さえ先に少しでも落ち着いてくれれば、見た目が全く変わります。背中が落ち着いても、顔が真っ赤ならば治った感じもありません。顔の炎症が改善してくると、炎症で浮腫んだ顔がしまってくるので、顔の輪郭がハッキリしてきて顔が締まって見えます。特に女性の場合は顔の見た目が変わってくると気持ちの持ちようも変わって来るでしょう。
ただ下肢の炎症に関しては時間がかかる傾向にあり、過去の経験上でも苦労することが多いです。上半身の炎症がまず治まって、暫くして下半身が徐々に改善して行くイメージです。ただ黄蓮解毒湯は炎症と言う燃えている状態を改善するので、体を冷やす作用があります。これは副作用というより、この冷やす作用が主作用になるので悩ましい部分でもあります。そのため冷えやすい人、虚弱な人には黄蓮解毒湯は基本使えません。基本と書いたのは、実際には虚弱な人でも炎症が強い場合には、半量やそれ以下にして短期間使うことがあるからです。この場合には胃が冷えないように、胃を軽く温める生薬を足したりもします。もし胃腸が冷えてしまえば、胃腸機能が低下してそれが解毒力の低下に繋がり、巡り回ってアトピー性皮膚炎の悪化に繋がってしまいます。更に困ったこ??とに、黄蓮解毒湯には皮脂腺の分泌を抑制して皮膚を乾かす作用があります。炎症部位で滲出液が出てベトベトしている部分には好都合ですが、長期の服用は乾燥部位が更に乾燥してしまう可能性があるので、漫然と長期に使うのは好ましくありません。
黄連解毒湯は、炎症が強く真っ赤に熱を持っているタイプのアトピー性皮膚炎の第一選択になります。良く効く処方ですが使い方を間違えると、体を冷やしてしまったり、皮膚の乾燥が悪化したりします。副作用が出そうならば量を調整する、また虚弱な人には他の処方を選択して解毒力(消化力)を上げる必要があります。
猫派、犬派の論争で「犬はお手や待てなど、教えれば覚えるから犬が良い」とか言う人がいます。後は一緒に散歩に行けるからとか、単純に可愛いからとかそれぞれ理由があるかと思います。私も以前には別々の時期に犬を2頭飼っていました。両者ともに不幸な結末となったので、それ以来犬は飼っていません。それに今はマンション住まいなので、犬を走り回らせる庭もありません。どっちらかと言うと大きな犬が好きなので、室内犬と言う選択もありませんでした。そもそも散歩に連れて行く時間あったら、自分のランニングに当てたいしで、当面犬を飼うことはないでしょう。で、少し猫(アメショ)にも芸を仕込もうとして、「待て」と「お手」を教えてようとしたところ、待たずに餌にお手をしてしまうと・・・・・そして手を拭こうとしたのですが、捕まえ損ねてそのまま走り回ると言う。結局床掃除の手間だけかかかりました。芸をして人の機嫌を伺わずに、好きに生きてもらうことにします!
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細野漢方診療所 細野孝郎