アトピー性皮膚炎の漢方治療を希望されおみえになる女性の患者さまは多いです。終わりの見えないステロイド治療に不安を感じたり、特に女性の方は肌を綺麗にしたい気持ちが強いと思います。
アトピー性皮膚炎は東洋医学的に診断すると、気血水の乱れが複合的な場合が少なくありません。症状は、季節、体調、ストレス、そして何より月経周期などによっても大きく変化しますので患者さんの状態の変化に注意しながらその時々で処方を変えていきます。
アトピー性皮膚炎と月経周期との関係
これまで多くの女性のアトピー性皮膚炎患者さまを診てきましたが、生理周期で症状に変化が出る方が多くいらっしゃいます。排卵期過ぎ頃より悪化し、生理が始まると症状が少し治まる。この様な方は、酷い生理痛や生理不順、生理時に血の塊が出るなど、瘀血症状が多くみられます。
このような時は、血流を改善する、つまり瘀血を改善するだけで、アトピーの症状が改善されることも多くあります。瘀血の改善とは基本的に子宮・卵巣系の血流を改善させることによって、ホルモンバランスを整えることです。つまりホルモンバランスの乱れによりアトピー性皮膚炎が悪化したり、また治り切らない方にはとても効果的な治療となります。また瘀血を改善する漢方には、同時に皮膚の血流を改善する作用があるため、黒く乾燥した皮膚に潤いを持たせて元の皮膚に戻して行くのです。
具体的には、四物湯、桂枝茯苓丸などの有名処方から、場合によっては桃核承気湯や大黄牡丹皮湯などを基本に、その方にあった処方を組み立てていきます。
ここで注意が必要なのは、最初から上記の様な女性系の処方単独で治療開始すると逆に皮膚の炎症が悪化することが多々あります。アトピー性皮膚炎の漢方治療を5段階に分けて考えると、女性系の処方が使えるのは2段階目以降です。3段階目では具体的な処方名で言うと温清飲が問題なく服用できる状態だと考えて下さい。温清飲には半量の四物湯が含まれ、これが皮膚や女性系の血流を改善する作用があります。温清飲が問題なく服用出来る様になると、皮膚の炎症や乾燥もさほど気にならなくなります。もちろんその先の4段階目で女性系処方の比率を増やし、そして女性系処方のみで治療する第5段階までいければ、美白とまでは言えませんが、皮膚の色もそれなりに満足出来る状態になっているかと思います。第五段階(四物湯系、女性系の漢方のみ)を長年続けて行ければ(炎症が再燃しない)、皮膚の色だけでなくキメも細かくしっかりとした皮膚に変わって行くので、そうなると多少引っ掻いても悪化しづらくなります。これがアトピー性皮膚炎治療の最終目標になります。
女性の場合には月経前(高温期後半)に悪化することが多いので、再診時が月経前等であれば見た感じでは、皮膚の状態が悪化していることがあります。ですから、効果判定は月経周期の同じ頃(初診が7日目であれば、次周期の7日目)に行うのが一番分かりやすいのではないかと思います。
アトピー性皮膚炎の漢方治療はご自身の感覚・体感がとても重要になってきます。簡単で結構ですので、手帳に記録をつけておかれるととても参考になると思います。また可能であれば写メを撮って見せて頂ければとても参考になります。毎日皮膚を気にして観察する御本人の感覚が一番正しく、その観察結果と診察時の状態で処方を決定します。もちろん毎回処方を決める時にはその理由と処方内容をお話ししますので、慣れて来ると、「皮膚の感じがこうだから2段階目の処方が良いと思う」とか患者様からおっしゃって来ます。アトピー性皮膚炎に限ったことではないのですが、自分の感覚と処方が一致すると治療はどんどんと良い方向に進んで行くでしょう。
アトピー性皮膚炎でお悩みの方、今受けている治療で効果を感じられない方、いつでも細野漢方診療所へご相談ください。