以前は大学病院で漢方外来を担当しておりましたが、そこでは全て保険治療でした。ここでは保険と保険外での処方の違いを例をあげてお話します。
1)36歳の会社員のやや痩せ形の女性が長年アトピーを患っていたと仮定します。
一年中よくないが、特に空気が乾燥する季節になると、皮膚がカサカサになり痒みがある。生理前にアトピーは悪化する。足やお腹が冷える。月経頃には便が出にくい。
アトピーは顔、頚部、背部、お腹、腕、脚と全身にあり、痒みが強い。とても乾燥しており、引っ掻くと皮膚が粉の様にパラパラと落ちる。漢方的な診察では、腹診上に右下腹部にお血の強い圧痛を認める。(月経3日前)ような場合。
保険診療では、腹診上での所見を基に桂枝茯苓丸などの血の流れを良くする薬をまず考えます。これを3〜6ヶ月やってからアトピー性皮膚炎に用いる様な漢方を考えていきます。基本的に血の流れが悪いと、先に何をやってもなかなか効果がありません。その後は温清飲などのパターンになると思います。またややっこしいのですが、月経になる少し前から、桂枝茯苓丸を月経終了まで使い、その他の時期を温清飲などで様子をみる方法もあります。さらには、温清飲を使いながら、便秘がある場合には月経前頃より、夜のみ桃核承気湯のような強めの薬を使う場合もあります。これはいずれも大学病院の漢方外来で保険診療をしていた頃に考えた方法です。
一方、自由診療では、これらを同時に治療することができます。
例えばまず温清飲を基本に、体にエネルギーを与える意味も含めて人参を加えます。お腹の冷えがある場合、血の巡りの悪さ程度を腹診所見より考え、紅花を少々加えます。
温清飲(あるいは四物湯と黄連解毒湯) + 紅花 + 人参
この処方より治療をスタートし、血の流れが改善できなければ、もう少し強いものを加えたり、熱が取れなければ、苦参や石膏を加えたりと、その方に合う様に様子を見ながら順番に作り上げていきます。
少し飲み方が複雑になるのですが、こういう例では月経周期により飲む処方を変えることもあります。その中でも最も簡単なのは、排卵日以降から2週間、それ以外の2週間とザックリ区切って考えることです。これは別の項目で詳しく書きましょう。
アトピー性皮膚炎の治療は、ステロイドやプロトピックを頂点に種々あります。漢方治療を選択するもよし、他の治療を選択するのも悪くはありません。ただ、ステロイドを含めて、どの治療も基本は生活・食生活になりますので、まずはそれを基本に考えてみて下さい。
アトピー性皮膚炎でお悩みの方、今受けている治療で効果を感じられない方、いつでも細野漢方診療所へご相談ください。